My Lost Dream

13ヶ国18都市を駆け抜けた2ヶ月間のお話。

意外でしょ

―最近やっと自分に自信が持てるようになった―





そういうと意外だねと言わんばかりの表情がテーブル越しに浮かぶ。この表情を見る度、周りからの印象と本心の乖離を痛感するのだ。



私は歳を追うごとに自分に自信が持てなくなっていた。だが持ち前の行動力はバラ色のフィルターとなって私を覆った。フィルター越しの私はとても華やかな世界で生きているように見えるが、中は黒い煙に覆われている。それでいて暗闇から見える外の景色はバラ色に輝いていた。





早くこの世界を抜け出したい


私もそちら側に溶け込みたい





そう思っていた。しかしそれは簡単ではなかった。私は悩んだ。悩みに悩んだ末に出した答えは、フィルターの内でも外でもない、新たな世界で生きることだった。





毎日私の内側に新鮮な空気を吹き込む広大な大地。海を跨いで辿り着いた世界で私は、自分の生きてきた空間の狭さを改めて認識する。見たことのない景色に出逢うたび、今までになかった感情が芽を出し、夢は掌状脈のように増えていった。



人間の短い寿命ではこの世界の全てを見ることは到底できない。だが一方でそれは”死ぬまで一生夢を持ち続けられる”という事でもある。明日叶えられる夢、命尽きるまで叶わないかもしれない夢、中身や大きさは違えどそれは人生を華やかに彩ってくれる。それがあるから生きようと思える。ならば夢のある人生はそれだけで幸せなことではないのか。ある日ふとそう感じた。



するとその瞬間、大地は今まで以上に激しく空気を吹き込み、私の中で何かが壊れた。無色透明になった世界で全てを失った私の手には、ほんの一握りの欠片だけが残っていた。







これからお話するのは自信を失くした大学生が最後の夢を叶えるべく世界を旅した2ヶ月間の物語。

―思考、理想、コンプレックス、生きる意味―

ありとあらゆるアイデンティティの変化がもたらした成長の過程を自分の言葉で綴ってゆく。







”意外だね”。

そう聞こえる前に。